原作は、再評価が高まる尾崎翠の「第七官界彷徨」です。
老女が一人、屋根裏部屋で歌を口ずさんでいる。彼女は「戀(こい)」を待ちながら、人々に忘れ去られた作家である。周囲には骸骨が現れ、死へと誘う。やがて老女が眠りにつくと、トランクを抱えた男と大阪の少年がやってくる。男はトランクに戀を閉じ込めていた。そして若き日の「私」小野町子は、人間の「第七官」に響く詩を書きたいと兄たちと同居します。
その二人の兄は、患者に恋した精神科医 一助、苔の研究に没頭する 二助。さらには、従兄弟の三五郎。町子は三五郎に心惹かれてしまいましたが、彼は林子に心奪われています。町子の恋の行方は、苔の研究に使うウンコ鍋の匂いと共に彼女の夢の中へ。そして兄たちも町子の夢の中へ巻き込まれます。彼らたちは、亡者と生者の世界を彷徨いながら三本足のワルツ、蚊男など、刺激的なメタファーとともに、時空を越え、ルーマニアまでぶっ飛びます。
一方、屋根裏部屋では、クライスラーの名曲を練習する楽士たちがいます。決して来ることのない明日の本番のために、寝ずに練習を続けています。
多重構造の世界で「第七官」に響く人形たちが、花粉が吹き荒れる屋根裏部屋で躍動します。
どうぞお楽しみに!